JACKET REQUIRED

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対談① 靴を磨く。そのディープな世界 対談① 靴を磨く。そのディープな世界
今回の対談は、シューズショップオーナーからシューシャイナーへ転向という異色の経歴をお持ちの株式会社コロンブス<三橋弘明さん>と、メンズファッションライターという肩書でありながら、ご自身でもハイシャインという靴磨きのスキルを習得されている<丸山尚弓さん>に、靴磨きの世界について語っていただきました。鏡面磨きと、そのマニアックな理論。素人には難しいエキゾチックレザーの見極め方。高級感溢れるパティーヌ(ムラ染め)を愉しむコツに至るまで、ディープな靴磨きの世界を「プロの視点」で語ってくれました。
Hiroaki Mitsuhashi
Hiroaki Mitsuhashi三橋弘明
1993年有名婦人靴ブランド勤務後インポートシューズのセレクトショップに入社し、エドワードグリーン、クロケット&ジョーンズ、ストールマテラッシィ等高級紳士靴の販売に携わる。その後オリジナルブランドデザインを担当。2012年株式会社コロンブス入社、シューシャイニスト/シューカラリストとして靴のカスタマイズを担当。
Shoe Shinner
Naomi_Maruyama
Naomi_Maruyama丸山尚弓
ファッションライターとしてWebマガジンを中心に執筆中。メンズファッションを題材としながらも自身のFACEBOOKでは、女性目線の解説が分かりやすいと大好評を得ている。またライター活動以外にも、メンズブランドの企画やブランディングも行っている。
Fasion Writer
Episode1

靴磨きを生業とする原点靴磨きを生業とする原点

丸山:「靴を磨く技術では海外からも評価される三橋さんですが、実際靴を磨き始めたのは何がきっかけだったんですか?」

三橋:「僕は祖父が靴職人でしたので、小さな頃から革が身近にある環境で育ちました。そんな僕が“靴磨き”に目覚めたのは20年前の事です。最初に働いていたのはインポートシューズのセレクトショップだったのですが、そのセレクトショップの業績が思わしくない。どうしたら良いのだろうかとそこにあった靴を手に取って磨き始めたことがきっかけでした。当時は高級な革靴を履くという意識が一般にはあまりない時代でしたので、高い靴は本当に売れなかったんです。閑古鳥が鳴く店内で商品を手に取って磨いていると、来店されたお客様が足を止めて“どうしてここの店の靴はこんなに光っているのか”と聞いてくる。水と缶に入ったポリッシュだけで光らせる事ができるのだという事を細かく説明していくと、興味を持ってくれたお客様が、一人また一人と靴を購入していただけるようになりました。」

丸山:「三橋さんが靴の魅力を地道に啓蒙していったということですね。」

三橋:「良い靴の魅力を最大限に引き出すことが、商品の購入に繋がるんだと気が付いた瞬間でした。販売を担当していたエドワードグリーンというイギリスの高級ブランド靴。その値段のせいか、それまで店では一ヶ月に3、4足しか売れていませんでした。しかし高級靴ブームがやってきたという事とあいまって、当時開催したオーダー会では157足も売れたんです、たったの三日間で。」

丸山:「靴のお手入れをすることで、靴好きのお客様と良い付き合いをすることができた。そんなとても良い時代でもあったんですね。ところでシューシャイナーになったのは今からわずか4年前だと聞きましたが、本当ですか?」

三橋:「その後お店の経営が上手く進んでいなかったときに、靴屋は辞めようかと考えたのですが、そんな時ふと初期の靴が売れなかった時代の事を思い返していたんです。靴を磨くとお客様が皆嬉しそうに足元ばかり見ながら帰って行く。つま先が光るということだけで、こんなにお客様に喜んでもらえるんだと思ったその気持ちを、もう一度思い出したのが靴磨きを生業とする原点ですね。」
Episode2

二工程に分けて作業することで、格段に仕上がりが変わる二工程に分けて作業することで、格段に仕上がりが変わる

丸山:「JACKET REQUIREDのサイトを見てくださる方は、埃を落としてクリームで栄養を与える、というベーシックな靴のケアは大体されている方も多いのではと思うのですが、やはりつま先がピカピカに光っている靴というのは特別な感じがしますよね。三橋さんが鏡面磨きでこだわっているポイントなどがあればぜひご教授いただけませんか。」

三橋:「靴磨きの上級者の方は手慣れていますので、缶ポリッシュだけで大概のお手入れができてしまいます。ところが、最近ではヨーロッパでもよい革が手に入りにくく、高級靴でも毛穴が開いてしまっている状態のものを多く見かけます。そういった革はキメが粗く油が染み込みすぎたり、うまくポリッシュがのらず光らせにくい。なので今まで通りのお手入れではあまり光らないんです。」

丸山:「そんなことがあるんですね?何か良い解決方法はあるんですか。」

三橋:「海外のビスポークシューズ愛用者の人達は、靴を光らせるためにクリームを全体的にすり込み、一晩かけて乾燥させてから磨き上げることで、極上の光沢を演出しています。でも私たち日本人はそこまで時間が無いですよね。そこでおすすめしたいのが、毛穴を埋めるベースになるクリームを事前に使うこと。単純に言うと表面をうめて高さを均一にする、プラス表面をコーティングするというように、作業を二つに分ける事なんです。」

丸山:「なるほど、作業を二つに分けて考えるのですね。」

三橋:「油性のクリームと、水性のクリームは相反する性質をもっていますので、両方を使うことで透明感がでるんです。よく職人さんが水をつけて靴を磨いていますよね。あれはなぜだと思いますか。」

丸山:「そうですね、水で油を馴染ませているとか。」

三橋:「実は水は油を溶かすためにつかうのではなく、革自体に水分を含ませて毛穴をしっかり開かせるために使うんです。毛穴がうまく開いたところにワックスが入ることによって凹凸が無くなり、表面が均等になって光りやすくなる。革の表面は油で潤っているので水が入ることによって繊維が動くんですよ。」

丸山:「原理がわかるとイメージしやすくなって、なんだかうまくできそうな気がしてきますね。」

三橋:「今は便利なシューケアグッズが沢山でていますから、一度挑戦して光らなかったとあきらめてしまうのはもったいない。今まで光らなかったという人もぜひ二つの工程に分けてやってみて欲しいですね。」
Episode3

エキゾチックレザーのお手入れは素材の見極めが肝心エキゾチックレザーのお手入れは素材の見極めが肝心

丸山:「ところで靴好きの方が必ず一足はレパートリーに入れておきたいと思うアイテムが、エキゾチックレザーの靴じゃないかと思います。高級な素材だけに私もなかなか自分でお手入れするのに躊躇して、手が出せずにいるのですが、何かアドバイスがあれば教えていただけませんでしょうか。」

三橋:「皆さんそう思うんですよね。でも実はお手入れがむずかしいのではなく、素材を見極めるのが難しいんです。」

丸山:「それはどういう事ですか?」

三橋:「エキゾチックレザーの加工には代表的なものとしてグレージングとラッカー塗装の二種類があります。エキゾチックレザーの代表格クロコダイルでは表面にカゼインというタンパク質の膜がのっているのですが、グレージングという加工では、ローラーで押しつぶして光沢を出しているので、お手入れの際に普通の靴クリームを使ってしまうと、成分に含まれている有機溶剤がこの膜を溶かしてしまうので革が曇ってしまうんです。一方もう一つの加工方法であるラッカー塗装は、表面に樹脂を塗って光沢をだすという工程を経ているので、有機溶剤をつかっても全然問題がないんですよ。」

三橋:「でも一般の人にどっちがどの加工かというのを見極めるのはむずかしいでしょう。だから必ずエキゾチックレザー専用のクリームを使うようにして欲しいんです。そうすればどちらの方法で加工されていても問題なく使用できますので。」
Episode4

プロが使う道具プロが使う道具

丸山:「三橋さんは普段どんなシューケアの道具を使っているのですか?沢山使われていそうですよね。」

三橋:「普段は、クリーナー、三角ビンのクリームと、缶ポリッシュのみですよ。」

丸山:「意外とシンプルですね!驚きました。」

三橋:「僕が仕事以外でも愛用しているのは〈ブートブラック〉のシューケアシリーズ。このクリームは一つの製品の中に含まれているワックスの種類が少ないので、それぞれのワックスの特性が出しやすいんですよ。しかも少ない量でもしっかりと効果が出せるから靴がべたつかないんです。」

丸山:「あとお手入れと言えば、ブラシもかかせないと思うんですが、ブラシには何かこだわりはありますか?」

三橋:「ブラシは特に気に入った形のものを使い続けていただきたい。実は僕あまり仕事以外で自分の靴はそんなに磨かない方なんですけど、その変わり玄関にはブラシを二つ置いているんです。一つは汚れを落とす用、もう一つは使い込んだ柔らかいブラシ。それで磨く代わりに優しく撫でてあげる。そうすると結構それだけで光るんです。」

丸山:「なるほど、それでしたら疲れていてもサッと出来そうですね。」

三橋:「ブラッシングはクリーナーと磨きの役割を両方果たしてくれるんです。こんな使い方もありかなと。」


丸山:「ところで、三橋さんは製品開発にも携わっていらっしゃるとお聞きしました。」

三橋:「そうですね。たとえばこの55gのクリーム。この中の染料や顔料の割合を決めるのにだいたいひとつのサンプルで40回は試しています。単純計算して20色だから20×40で800通りですね。」

丸山「気が遠くなりそうな作業ですね。」

三橋:「その甲斐あって、先日行ってきたピッティでも海外の有名な靴メーカーから大変好評をいただいて、ぜひ使いたいと言ってもらいました。」
Episode5

パティーヌの基本は三原色のバランスパティーヌの基本は三原色のバランス

丸山「三橋さんはシューシャインもさることながら、パティーヌ(ムラ染め)のお仕事もされていますよね。」

三橋:「靴磨きって愉しめる要素が沢山あることが大切だと思うんです。パティーヌはその愉しみがすごくわかりやすい方法だと思っています。たとえば、青い靴を磨く時、普通だったら青いクリームを使いますよね。それをあえて黄色のクリームを使ってみる。そうするとそこはちょっとグリーンになって新たな色味が生まれる。誰でも買い物をする時って、皆さん自分の事を良く見せたいという前提があって物を選んでいるはずです。でも買ってそのまま使うだけで終わってしまう、というのはちょっと勿体無いと思いませんか。」

丸山:「そうですね、なにか自分でそのモノの表情に変化をつけられたら愉しいでしょうね。普段はどんな色をお客様にリクエストされることが多いですか?」

三橋:「本当に様々です。たとえば赤い靴をグレーにしてくれとか、ライトブラウンの靴をエナメルグリーンにして欲しいとか。ご希望の色を出すためには、挿し色で一回元の色を打ち消す色を入れてから希望の色を重ねていく作業が必要な事もあります。本当に様々なリクエストをいただきますので、やりがいがありますよ。そもそもパティーヌというのは、お客様が長年愛用した靴をリフレッシュして、また新しい気持ちで快適に履いていただくために生まれた技術ですから。」

丸山:「何色の靴をベースに、どのクリームを使ったらこの色が出せるかとイメージするには、どのような勉強が必要なのですか?やはり経験なのでしょうか。」

三橋:「そうですね、色の三原色で考えていく基本は絵画と一緒ですよ。普通は薄い色から濃くするんですが、僕は逆も出来ます。結構むずかしいリクエストもあるんですけど、お客様からのリクエストはどんな事でもはなるべく応えたくて。」

丸山:「どこまでもお客様の満足にこだわることで、ご自身も進化していく。勉強になります。」
Episode6

科学的側面を理解しておくことで、困ったときの選択肢が広がる科学的側面を理解しておくことで、困ったときの選択肢が広がる

丸山:「私は靴を磨くということがシンプルに好きで、いつもアートをつくるみたいな感覚でやっていたのです。でも三橋さんのお話を伺っていると、結構緻密な計算のもとにできているんだなと感じました。」

三橋:「もちろん感覚主体でやるのも全然ありなんですけど、知識として科学的側面を知っておくと、困った時に選択肢が広がると思うんですよね。」
丸山:「たしかに、失敗したときに原因がわからないのでは困りますね(笑)」

丸山:「夢中でお話を聞いていたらあっという間に時間がたってしまいました。対談なのに三橋さんのお話に一方的に聞きいってしまいましたね。でもおかげで本当に貴重な知識を吸収することができました。最後に三橋さん、靴を大切に履くために本当に必要な事とはなんでしょう。」

三橋:「靴は傷ませないためには少し間隔をあけて履いた方がいいとよく耳にしますが、僕としてはとにかくどんどん履いて欲しい。履くことで靴が完成していく。履いてこそその人のモノになると思うんです。あと、雨だからといって、お気に入りの靴を履くのをためらわないで欲しい。悪天候の中、革靴を履くのが悪いのではなく、履いた後に適切なケアをしないことが問題だということ。」

丸山:「さすが、シューケアありきですね。」

三橋:「そうなんです。まず、磨こうとする時間を作ってもらうのが大切です。特に新しい靴を買った時は、汚してしまうことを恐れずに、まずはどんどん履いてあげる。それからどんなお手入れをするかを考えて靴と向き合って欲しいですね。」

丸:「ただ買っただけではなくて、その靴と良いお付き合いができるようになる。それが靴磨きやシューケアといわれていることの最大の魅力かもしれないですね。きちんと手入れをすれば何度でも靴は甦るというわけですね。今日は本当にありがとうございました。また機会がありましたら是非よろしくお願いいたします。」

三橋:「こちらこそ是非また。」
2時間以上におよぶお二人の対談は、熱量が高く、本当に話題が尽きることが無いように感じました。昔から「ファッションは足元から」とはよく言ったもので、業界人には靴好きはたくさんいらっしゃいます。また新たなゲストをお招きして、JACKET REQUIREDらしいディープな第二弾を企画したいと考えています。最後までお付き合いいただいた“ディープな靴好き”の皆様こうご期待を!!

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